かわるとわかる【引用の織物】

*「かわる」がわかる

「かわる」という言葉にこだわってみたいと思います。一日に一度は口にしたり書いたりしそうな言葉であり、さまざまな意味や記憶やイメージを呼び起こしてくれる言葉です。「かわる」という言葉を言い換えるとすれば、どんな言葉が浮かびますか?

「変わる」「代わる」「換わる」「替わる」とワープロソフトを用いて変換すると意味が具体性を帯びて、イメージが膨らんできますね。それは

*「かわる」がわかってくる

からです。「かわる」が「わかる」とは、言葉の遊びです。もっと遊んでみましょう。

*わかる。分かる。判る。解る。別る。

 こうすると「わかる」がわかってきませんか?「わける」でも、できそうです。

*わける。分ける。別ける。

     *

 いずれにせよ、

*「かわる」という言葉の意味やイメージが、漢字を当てることによって「わかる」ようになる

という過程は、駄洒落のようでありながら、ある程度「言えてる」ことだと考えられます。

 そのさいに、

大きな役割を果たすのが、漢字=感じ=感字=かつての中国語である、

と思われます。ずらしてみましょう。

*「かわる」を「わける」とわかる。
*「かわる」を「分ける」と分かる。
*「かわる」を「 変わる、代わる、換わる、替わる」というふうに「分ける、別ける」と、意味が「分かる、判る、解る、別る」。

 簡単に言えば、

*ひらがなという表音文字が漢字という表意文字の助けを借りて意味がとりやすくなる

という一例です。こう書くと、つい「もしも」と考えてしまいます。

 もしも、日本語が歴史的経緯によりひらがなだけで表記される言語であったとしたら、日本と日本語はどうなっていたでしょう? この疑問文の「ひらがな」をやはり表音文字である「ローマ字」に置き換えても、いいでしょう。

(「かわる(2)」より)

 

*「わかる」の表記

 言葉遣いが「正しい」か「正しくない」かを、送り仮名の付け方に絞って考えてみましょう。簡単に言えば、たとえば「わかる」にどんな漢字を当て、ひらがなとの配分をどうするかです。手元にある複数の辞書と新聞社系の用字用語集を参考にして、以下にまとめてみます。

*「わかる」=「分かる」=「別る」=「解る」=「判る」

 「わかる」をこのように表記することが「可能」であり、「標準的には」「分かる」と表記するように「なっている」ようです。「なっている」を「勧めている」と理解する人もいるでしょうし、「決められている」と受けとめる人もいるでしょうし、「強制されている」と感じる人もいるでしょう。

 いずれにせよ、「分かる」と表記するのが「正しい」と考えているのに近いスタンスだと思います。みなさんの中に「『分かる』だけを使うなんて、もったいないなあ」と感じる方は、いらっしゃいませんか? 次の表みたいなものをご覧ください。

*「分」 ⇒ わける、バラバラにする、わきまえる、おのれを知る、わけて配る、デリバリー、というイメージ。

「分別(=ふんべつ)」「分解」「分離」「分裂」「野分(=のわけ)」「分水嶺」「分析」「微分」「通分」「分類」「分家」「部分」「五分五分」「春分」「秋分」「身分」「分際」「区分」「分割」「分配」「分譲」「分担」……

*「別」 ⇒ わかれる、バイバイ、さよなら、ちょっぴりさみしい、離れる、他とは違う、ゴーイング・マイウェイ、ああ何と薄情な、わける、というイメージ。

「別離」「死別」「別居」「送別」「餞別」「特別」「格別」「別格」「区別」「分別(=ぶんべつ)」「判別」「大別」「差別」「千差万別」「識別」「鑑別」「別荘」「別個」「別記」「個別」……

*「解」 ⇒ とく、バラバラ、わける、帯なんかをほどく、よかったね、ゆるゆる、自由にしてやる、バイバイ、余計なものを取り除く、脱がしちゃう、説明する、謎をとく、なっとく、わかる、どれどれ見せてごらん、なるほど、やっぱり、そうだったのか、というイメージ。

「解体」「分解」「解剖」「和解」「溶解」「融解」「解放」「解禁」「解散」「解雇」「解毒」「解熱」「解消」「解除」「解決」「理解」「誤解」「難解」「不可解」「氷解」「解明」「読解」「明解」「詳解」「図解」「解釈」「見解」「解説」「解析」「解答」……

*「判」 ⇒ わかる、ガッテン、なるほど、われる、明らかになる、白黒をつける、暴露される、さばく、けちをつける、ポンと押す、印をつける、というイメージ。

「判断」「判別」「判定」「判明」「判読」「判決」「裁判」「判事」「公判」「審判」「判例」「批判」「談判」「評判」「判子」「血判」……

     *

 以上は、複数の漢和辞典などをもとにして、「わかる」に当てはめることが「可能な」各漢字のイメージを調べて分類してみたものです。何ぶんにも素人のやっつけ仕事であることを、ご承知おき願います。また、こうした分類は漢和辞典によっても、微妙に異なることも付け加えておきます。

「とりあえず」、こんなふうにも「わけられる」、あるいは、このブログを書いている者の「個人の感想」くらいに受け止めてください。

「いやに、ごちゃごちゃしているなあ。すっきりいこうよ。『わかる』は『分かる』でわかるじゃないの。これで決まり」

といったふうにお「感じ」になりましたか? それとも、

「これで『わかる』の意味が整理できたような気がするけど、『分かる』だけじゃなくて、場合によっては『別る』や『解る』や『判る』もあっていいかな」

とお思いになりましたか? 

 個人的には、「わかる」に当てる漢字として「分」だけを採用して、「別」「解」「判」を捨てるなんて「もったいないなあ」という気持ちが強いです。

 とはいえ、人それぞれです。言葉のつかい方は、各人の生い立ちや生活と深く変わった結果であり途中経過なのです。他人がとやかく口を出す筋合いのものではありません。不都合が生じれば、本人が対処すればいいのです。

 言葉遣いが「正しい」か「正しくない」かは希薄な根拠に基づいた個人の意見および感想にしかすぎません。言葉がずれる、つまり変わるのは当たり前のことです。書き言葉であれ話し言葉であれ、平安時代や江戸時代や明治時代の言葉遣いのまま残っていないのが証拠です。

 辞書を引いていて語源に関する記述を読んでいると「~の転・転じて・転じた」、「当て字」、「約・約音・約言・約転」、「訛り・訛って」といった言葉をよく目にします。要するに、言い間違いや書き間違いや発音上のアクシデントが起こったり、簡略化や勘違いが生じたという意味でしょう。

 言葉を使うのは人の自然ないとなみですから、そうなるのが当然です。「正しくない」がたくさん起きて言葉が変遷する。そう理解しています。

(「かわる(4)」より)


*「わかる」と「かわる」のシンクロ

 いつの間にか、「かわる」の話が「わかる」の話になってしまいました。「かわる」から「わかる」にテーマが変わり、「かわる」に代わって「わかる」が登場し、「かわる」の話が「わかる」にすり替わった、ということでしょうか。

 整理してみましょう。

*「かわる」を「わける」とわかる。
*「かわる」を「分ける」と分かる。
*「かわる」を「 変わる、代わる、換わる、替わる」というふうに「分ける、別ける」と、意味が「分かる、判る、解る、別る」。

 簡単に言えば、

*ひらがなという表音文字が漢字という表意文字の助けを借りて意味がとりやすくなる。

 以上のような話をしていたのです。確かにややこしいですね。とはいえ一貫して「かわる」について書いているつもりなのですが、分かっていただけますでしょうか?

     *

 ここで「かわる・かえる」という言葉について、「かわる(4)」で紹介した「わかる・わける」と同様の表みたいなものを作ってみたいと思います。

 まず前提です。

*「かわる」=「変わる(or 変る)」=「代わる(or 代る)」=「替わる(or 替る)」=「換わる(換or る)」

 以上が、送り仮名で見た「かわる」のとりあえずの全貌です。

 次に、上で使われている個々の漢字にまつわるイメージ(印象・感想)を、複数の漢和辞典や、国語辞典、用字用語集を参照しながら、アマチュアである個人の立場からまとめてみます。

*「変」 → ものごとの状態や質や内容が以前と異なった状態になる、変化する、良し悪しは別にしてこれまでとは違うことは確か、化ける、あれあれ、あれよあれよ、ふつうじゃない、うへっ、尋常ではない、不気味だ、いやだあ、異様だ、あらまあ、変だ、おかしい、二つ(※あるいはそれより多い数)のものがそれぞれ違っている、妙なことが起きる、突然起こる、わざわい、困った困った、何だこれは、どうなってるんだ、乱れる、くるう、時があらたまる、場所がうつる、動く、ありゃいつのまにかこんな(or あんな)ところに、というイメージ。

「変化」「不変」「変革」「変容」「変移」「変質」「変調」「変転」「変貌」「豹変」「激変」「劇変」「臨機応変」「変装」「変相」「変速」「変性」「変成」「変声期」「変名」「変節」「変心」「変身」「変遷」「変更」「変異」「異変」「凶変」「地変」「事変」「政変」「変死」「変幻」「変人」「変質者」「変種」「変則」「変体」「変態」「大変」「変乱」「変事」「変換」「変動」……

*「代」 → AのかわりにBを用いる、かわって引き継ぐ、今度はこれを使うのね、○○と申しますよろしく、みがわり、○○(or ○○たち)になりかわりましておつとめさせていただきます、入れ違い、新しいのはいいけどこんなんで大丈夫かしら、かわるがわる、いれかわりたちかわり時は過ぎる、時世、あれのかわりにこんなにもらっちゃった、あたい、これとあれが同等だっていうことなのか、かち、ねだん、というイメージ。

「代理」「(交代)」「(身代わり)」「代人」「名代」「代表」「代行」「総代」「代官」「代議士」「代議員」「代議制度」「代用」「代書」「代筆」「代講」「代弁」「代々」「世代」「時代」「歴代」「上代」「末代」「古代」「近代」「現代」「当代」「先代」「初代」「稀代」「希代」「代償」「身代」「代金」……

(※( )は別の漢字を当てる場合があるものです)

*「替」 → Aに入れかわってBになる、今度はこっちの番、入れ違い、今度はこんなのが来たよ、○○と申しますよろしく、おっ新顔だね、これが駄目になったから捨てちゃう、あっちにしよう、時があらたまる、というイメージ。

「(交替)」「(替え玉)」「(身替わり)」「(引き替え・引替え・引替)」「(取り替え・取替え・取替)」「(組み替え・組替え・組替)」「(入れ替え・入替え・入替)」「(言い替え・言替え)」「(借り替え・借り替え)」「(着替え)」「(差し替え・差替え)」「替え歌・替歌」「両替」「為替」「鞍替え・鞍替」「付け替え・付替え」「クラス替え」「商売替え」「国替え・国替」「組織替え」「吹き替え・吹替え」「振り替え・振替え・振替」「月替わり」「年度替り」「日替わり」……

*「換」 → AとBとをかえる、とりかえる、入れ違い、差し引きゼロ、○○さんだと思ってお相手しますからね、○○さんだと思って何なりとお申し付けください、新しく来たものの役目と役割を重視する、これで役に立たなかったらクレームどころか返品だ、というイメージ。

「交換」「(換え玉)」「(引き換え・引換え・引換)」「(取り換え・取換え・取換)」「(組み換え・組換え・組換)」「(入れ換え・入換え・入換)」「(言い換え・言換え)」「(借り換え・借換え・借換)」「(着換え)」「(差し換え・差換え)」(「置き換え・置換え)」「変換」「転換」「置換(ちかん)」「換気」「乗り換え・乗換え・乗換」「換言」「換金」「兌換」「換算」……

 以上は、即席に作成したリストなので、だいたい感覚的にはこんなものではないか、くらいに理解してください。

     *

 繰りかえします。

*「かわる」を「わける」とわかる。
*「かわる」を「分ける」と分かる。
*「かわる」を「 変わる、代わる、換わる、替わる」というふうに「分ける、別ける」と、意味が「分かる、判る、解る、別る」。

 簡単に言えば、

*ひらがなという表音文字が漢字という表意文字の助けを借りて意味がとりやすくなる。

でしたね。

     *

 繰りかえします。

*「かわる」=「変わる(or 変る)」=「代わる(or 代る)」=「替わる(or 替る)」=「換わる(換or る)」

でしたね。

     *

 さて、「かわる・かえる」を「わける・分ける・分類する」だけでなく、「かわる・かえる」に当てる漢字のイメージ(意味や語義というよりも個人の印象や感想です)を見て、さらにその漢字の使用例を見てみました。

*「かわる・かえる」を「わける・分ける・分類する」ということが、同時に「かわる・かえる」を「かえる・変える・代える・替える・換える」でもある

つまり、

*「かわる・かえる」と「わかる・わける」がシンクロする。

ことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 このシンクロという怪しげな言葉をさらに妖しく言うと、

*「かわる」を「わけない」と「わからない」し「かわらない」、「わかる」を「かえない」と「わからない」し「かわらない」。

となります。

 この怪しくて妖しい言い方を簡単に言うと、

*変換(する)

なのです。

 いわゆる「文字変換」の「変換」ですね。この文章はパソコン内にあるらしい「かな漢字変換」という「日本語入力システム」を利用して書いたものみたいなのですが、キーワードは「変換」ではないでしょうか。

 大和言葉と漢語の二重構造などという抽象的で大げさな言い回しが頭に浮かびましたが、具体的に考えましょう。

 漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字の混在した表記が存在してどれくらいの期間になるのかは知りませんが、この国において長い間おこなわれてきた書くという行為は、言い換えれば「変換」であったと言えるのではないでしょうか。

 別にパソコンやスマホで文字入力をしなくても、私たちはしょっちゅう頭の中で「変換」をしているのであり、パソコンやスマホが出現する以前から、そうした状態が続いてきたのではないでしょうか。

(「かわる(5)」より)

 

*「わかる」と「かわる」のシンクロを体で演じる

「かわる」と「わかる」という二つの言葉のイメージ=意味=使われ方を調べて、いかにもアマチュアらしい簡単なリスト=見取り図をつくってみて、「わかる」と「わかる」のあいだに共通点というより何か関連性があるように思えてきました。

「かわる(4)」と「かわる(5)」で紹介した、「わかる・わける」と「かわる・かえる」の見取り図もどきを参照していただくと、これから書くことの意味を取る助けになるかと思います。

 以下の表では、「わかる・わける」と「かわる・かえる」の見取り図を六つに分け、キーワードを取り出して並べてあります。

(a)【表象・認識・知覚】
「代理」-「交換」-「理解」-「判断」

(b)【学問】
「代理」-「変換」-「理解」-「誤解」-「解釈」-「分析」-「分類」-「識別」-「判断」-「判明」-「解明」

(c)【経済】
「交換」-「変動」-「代金」-「為替」-「換金」-「兌換」-「換算」-「判子」

(d)【社会・生活】
「代理」-「分類」-「区別」-「差別」-「解明」-「理解」

(e)【政治・立法・行政】
「代理」-「代行」-「代表」-「代議士」-「代議制」-「変化」-「変革」-「変節」-「変心」-「判子」-「変身」-「政変」-「事変」

(f)【司法】
「代理」-「代行」-「解明」-「理解」-「解釈」-「分類」-「区別」-「代表」-「判事」-「裁判」-「判決」-「審判」

 このように、六つのグループをつくってみました。それぞれのグループには見出しがあります。その見出しと関係のある言葉を取り出したということです。

 以上のグループ分けから、次のようなことが言えるように思います。

*「かわる・かえる」と「わかる・わける」は深く結びついているらしい。その結びつきは、「かわる・かえる」と「わかる・わける」という動作=運動=身ぶりが、シンクロ=連動し合っていることから生じているらしい。

     *

 ところで、二つ以上のものやグループ間に共通点や関係性を見出し、それに理屈をつけたり規則性を当てはめることを「こじつけ」と言います。

*「こじつけ」

がポジティブに受けとめられると、

*「法則」とか「理論」とか「説」

という栄誉ある言葉を与えられることがあります。ネガティブに受けとめられると

*「でたらめ」とか「でまかせ」とか「めちゃくちゃ」とか「がせ」など

の罵声が浴びせられるか、単に無視されます。

 それはそれでいいとして、みなさんに考えていただきたいことがあります。

「かわる」および「かえる」と、「わかる」および「わける」という二種類、数え方によれば四種類の「動作=運動=身ぶり」に「共通性 or 関係性」があるでしょうか?

 それを知るためには、想像力が必要になります。というわけで、あくまでも、「 kawaru 」「 kaeru 」「 wakaru 」「 wakeru 」という音声として、それぞれの「動作=運動=身ぶり」をイメージしてみてみましょう。

 とりあえず、上の(a)から(f)の六種類のリストは、いったん忘れてください。シンプルに、「かわる」「かえる」「わかる」「わける」をそれぞれイメージしてみてください。頭だけで考えていると難しいですよね。では体を使って表現してみましょう。

     *

 自己流にジェスチャーやパントマイムをしてみるのです。つまり、自分の母語が通じない他言語の話し手に、四つの言葉=語の意味を説明する、あるいは伝えるために身ぶり手ぶり、場合によっては表情や顔芸を用いてみるシミュレーションを実行してみましょう。一瞬の動作である必要はありません。物語性があって時間がかかる動作でも、いっこうにかまいません。

 また「おーっ」とか「はっ」くらいなら、声を出してもいいことにしましょう。物は試しと言います。実際に、ひとりでこっそりと試してみませんか。ひとさまに提案しておいて自分は何もしないのは失礼ですので、こちらでも、その作業をしばらく実行してみます。

(「かわる(7)」より)

 

*「わかる」は身振り

 さて、「かわる」「かえる」と「わかる」「わける」ですが、これを言葉が通じない他の言語の話し手に伝えようと、「自分なりに考えてみる」ことを実践し、その四つの言葉を「動作=運動=身ぶり」を用いて相手に伝える努力を「体」を使って実行してみることは、擬似的に「言葉の発生」に身を置く体験になります。いわゆるシミュレーションになります。

「動作=運動=身ぶり」に意味を付加しようと、自分の想像力(=頭)と顔を含めた体の動きを動員してみる。知恵を絞り、体を動かし汗をかいてみる。これが大切ではないでしょうか?

 たとえば、脳梗塞脳出血などで言葉を失ったヒトがリハビリをするさいには、頭(=脳)だけでなく、体全体を使った機能回復が必要だと言われています。重労働らしいです。言葉の仕組みと働きを知るためには、ただ考えているだけでは、得られるものは少ないと思います。身体全体を動かすことが大切です。

     *

 かつてフランス語をフランス語で教えるフランス政府公認の学校に通っていたことがありますが、そこでは、やたら体を使うのです。日本語に訳して教えるのではありませんから、当然です。頭だけを使って習う中学や高校での英語の授業とは大違いの方法でした。個人的には、大きな収穫がありました。

*「演技」

および

*「演じる」

という言葉を思い出しましょう。

*「演じる」とは、自分が別の「もの(※物であり、者です)やこと」になる様(さま)を想像し(=シミュレートし)、その想像を体で実際に示す(=表現する)こと

です。言い換えれば、ある「ものやこと」を自分なりに「わかった」と仮定し(=台本を手にし)、自分をその「ものやこと」に「かえて」みること、あるいは、自分がその「ものやこと」に「かわって」みることです。

*「ものやこと」を「わけ」、「かえて」みる。 = 「ものやこと」に対して、「わかる・わける」と「かわる・かえる」という動作を加える。

 今、「=」を用いて書いた二つのフレーズは、「かわる・かえる」と「わかる・わける」の関係を、自分なりに言い表したものです。この二つのフレーズは、

*言葉の仕組みと働きを、「たとえ」=「演技」として表現するための「たとえ」=「演技」でもある

のです。ややこしい言い方になりました。次のように言い換えることもできるかと思います。

*言葉を使うとは、森羅万象(=ものやこと)を知覚して(=わけて)、音声(=話し言葉)や文字(=書き言葉)や身ぶり(=手話や身体言語など)に置き換える(=かえる)ことである。

 そのさいに、決定的な役割を果たす言葉の「仕組み」および「働き」とは

*「Aの代わりにBを用いる」という、「動作=運動=身ぶり」=「たとえ=装うこと=演技」

なのではないでしょうか。

     *

「かわる・かえる」と「わかる・わける」という、言語の仕組みと働きについてきわめて象徴的な意味を持つ言葉を、知恵を絞り想像力を働かせると同時に、実際に体を動かし汗をかいて演じてみる。これは「かわる(7)」 で提案したことです。

 これを実行なさった方なら、以上書いたことの意味がわかっていただけると信じています。これが、言葉の仕組みと働きを考える第一歩だと考えています。

     〇

 言葉の仕組みと働きを説明するのに、

*「かわる・かえる」

*「わかる・わける」

という言葉を使うのが便利だということが、偶然の一致なのか、何か因縁めいたものがあるからなのかはわかりません。単に、そのように思い込んでいるからなのではないか。そうも思います。

 いずれにせよ、この四つの言葉(※数えようによっては二つですが)を用いて、言葉の仕組みと働きを説明するのために、どれだけのこと(=こじつけ)ができるか、試して(=遊んで)みます。

*わかるからかわる。 = 分かるから変わる。 = わけてかわる。 = 分けて変わる。 = 理解(=判断=識別)することで変化(=変心)する。

*かわるのがわかる。 = 変わるのが分かる。 = かわってわかる。 = 変わって分かる。 = 変化(=変動=変心)することを理解(=判断=識別=解釈)する。 = 変化(=変動=変心)することにより理解(=判断=識別=解釈)する。

     *

 以上の二つの例から、

*「わかる・わける」が「知覚=認識=思考すること」

そして

*「かわる・かえる」が「身体の運動や動きや働き、大きく言えば生きるといういとなみ」

を指し示している

と言えそうな気がします。つまり、言葉とヒトの間にある基本的な関係を言い表しているのではないでしょうか。めちゃくちゃこじつけている、と言われれば返す言葉がありません。とはいうものの、たとえば大和言葉に漢字を当てる「感字」という作業がかなりのこじつけめいた行為であったことを思い返すと、これくらいのこじつけは許してもらえるかな、とも思います。

     *

*かわるからかわる。 = 変わるから変わる。 = かわってかわる。 = 変わって変わる。 = かえてかえる。 = 変えて変える。 = 変化するに伴い変化する(=連動・シンクロナイズ・連鎖反応)。 = 変化し、さらに変化する(=連続・加速化・長期的な変貌)。 = 改変(=改革)し、さらに改変(=改革)する(=発展=発達=進歩=進化)。

 以上の「動作=運動=身ぶり」は、ヒトの普遍的でさまざまな行動・ヒトの経済活動・半ば一人歩きしている状況にある経済の動き・さまざま面から見たヒト(=人類)の歴史・ヒトとは無関係の森羅万象の変化(=変動)など、かなり広範囲な「動き」にこじつける(=当てはめる)ことができそうな気がします。

     *

*わかるからわかる。 = 分かるから分かる。 = 分かるから分かるへ。 = わかってわかる。 = 分かって分かる。 = 一度理解することによって次々と理解が深まる(=進歩)。 = 理解が理解を呼ぶ(=コミュニケーション=伝達=ネットワークの拡大=輪の広がり=平和=和解)。 = 解釈が解釈を呼ぶ(=進歩=発展=深化=議論・論争・対立・批難の拡大)。

 以上の「動作=運動=身ぶり」は、特にヒト同士の関係性と、人類としてのヒトのいとなみにまで、こじつける(=当てはめる)ことができそうな気がします。

     *

 ここまで書いてきたことから、次のようなことが言えるのではないかと思います。

*「かわる・かえる」ことなしに「わかる・わける」ことはない。

*「わかる・わける」ことなしに「かわる・かえる」ことはない。(※ヒト以外の生物でもそうですが、特に無生物の場合には「分かる・分ける」を「分解・分裂・分割・分離・解体・溶解」のイメージで考えてください。)

「かわる・かえる」と「わかる・わける」とが、「シンクロ=連動している=関連し合っている」、あるいは、見方を変えれば、「重なり合っている=かぶっている=関連している部分がある」と、先に書いたのは、こういう意味だったのです。

     〇

*ヒトはこじつける生き物である。

 たった今書いたフレーズは、日ごろから感じていることを文字にしたものです。これまでの経験から、むっとなさる方が多いだろうと想像します。「こじつける」という言葉を「脱色=解毒=中和=中性化」できないでしょうか? たとえば、「こじつける」を「複数のものごとに関係性を見いだす」なんて言い換えてみてはどうでしょう。少しは響きがよくなりましたか?

「複数のものごとに関係性を見いだす」と書いたとたん、思わず笑ってしまいました。「こじつける」の強引さと、図々しさと、ちょっと恥ずかしいという気持ちが薄れて、迫力がなくなったというか、間が抜けた感じがするのです。どう言えば、わかっていただけるでしょうか。そうだ。普段は正装などしないのに、おめかしをして、やたら気どった表情をして鏡の前に立った時の気分に似ています。とってつけたようで、似合わないのです。やはり、「こじつける」でいきます。

     *

 広い意味で言葉を考えてみましょう。話し言葉、書き言葉、表情や仕草や身ぶり手ぶりを含む身体言語=ボディランゲージ、手話、ホームサイン(※家庭だけで通じる断片的な手話)、さまざまな標識や記号などをいっしょくたにして、「言葉」と、ここでは呼ぶことにします。自分とは違う言語を話すヒト、いわゆる言葉の通じないヒトに、「かわる・かえる」と「わかる・わける」という言葉=動作を、ボディランゲージを用いて伝えてみよう。そんなお遊びというか実験をやってみませんかと「かわる(7)」で、みなさんに呼びかけました。

 伝えるのは別の言葉や動作でもよかったのですが、

*「かわる・かえる」と「わかる・わける」の持つ、言葉の根源的な動態=有り様(※あくまでも個人的な意見で、単なる思い込みかもしれません)を頭(=想像力)と体全体(=体力)を使って演じてみることが、言葉の仕組みと働きを考えるうえで、助けになるに違いない。

と思ったからでした。さて、そんなややこしいことは抜きにして、たとえば、ペン、パソコン、ケータイ、消しゴムといった身の回りのものや、朝ご飯を食べる、歯医者へ行く、風邪を引く、乗るつもりだった列車に遅れる、といった日常的な動作や状況を、身ぶり手ぶり表情などを用いて、誰かに伝えるつもりになって演じてみる。そんなお遊びをしてみませんか? きっと、「こじつける」という、ちょっとネガティブな響きのある言葉を体感できると思います。

 具体的には、

*我流の「ジェスチャー=身振り・手振り=ボディランゲージ」

が考えられます。あるいは、

*手話

という言語(※念のため、駄目押しに強調させていただきますが、たとえば日本語や英語と同じく、手話は言語です)を学ぶことも視野に入れてよいのではないかと思います。

     *

 ここで話を飛躍させます。上で述べたような「広義の言葉」をつかう(※既にあるもの=手本を使う)、あるいは、つくる(=自分が表現したいものごとを表現する手本がなかったり、伝えたいものごとを伝える手本がない場合には、工夫して自前で作るしかありません)さいには、その前提に「こじつける・こじつけ」があるのではないでしょうか。

 考えてもみてください。Aというものがあれば、それを相手に見せれば、それで済みます。でも、Aが手元や近くにないために、A以外のものでAを表すのです。これって、こじつけではないでしょうか。それこそ、こじつけだという言葉が返ってきそうですが、さらに性懲りもなく、いけしゃあしゃあと、こじつけをさせていただきます。

*言葉とは、Aの代わりにAでないものを用いるこじつけである。言葉というこじつけが、ヒトをヒトとならしめている。

 そうこじつけてもいいのではないでしょうか。つまり、こじつけをこじつけているわけです。「こじつける・こじつけ」という言葉が、どうしても気に入らない。人間様である自分のプライドが許さない。そんなふうに思われる方のために、解毒済みバージョンを用意しました。

*言語の使用とは、Aの代わりにAでないものを用いるという、人類の英知から生じた崇高ないとなみである。言語を使用するという行為が、人間を人間ならしめている。

(「かわる(7)~(10)」より)

 

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